Wednesday 28 May 2014

両陛下の写真、ツイートあり? 「失礼」「敬愛伝わる」




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両陛下の写真、ツイートあり? 「失礼」「敬愛伝わる」
中田絢子2014年5月28日21時23分
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ツイッターにアップされた両陛下の写真
 天皇、皇后両陛下を写した1枚の写真をめぐりネット上で議論が起きている。お二人の旅先に居合わせた一般の人が至近距離で撮影した、すてきな笑顔のツーショットなのだが……。

 両陛下は今月21、22日、私的な旅行として栃木と群馬を訪問。写真は22日夕の帰路、新幹線に乗るため立ち寄った栃木県のJR小山駅コンコースで撮られた。

 当時、同駅構内には通学客ら多くの人が集まり、両陛下が現れると歓声があがり、スマートフォンなどのシャッター音が響いた。写真はこの時撮影されたとみられ、「小山駅に天皇陛下いた…ベストショット撮れた…(涙の顔文字)」とのコメントとともにツイッターにアップされた。

 エレベーター近くを歩く両陛下を2、3メートルの距離で撮影したものとみられる。天皇陛下はにっこりとほほ笑んで右手をあげ、傍らの皇后さまも親しみのこもった笑顔を向けている。ネット上では「JK(女子高生)が撮影した」と言われているが、実際に誰が撮影したものかは不明だ。ツイッターにアップされると、たちまち2700以上リツイートされ、ほぼ同数の人が「お気に入り」に登録した。

 だが、「女子高生が撮影したから撮れた自然な笑顔、よかった」「心打たれる」といった称賛が寄せられる一方で、「わたしには絶対できないし希望としてみんなにもやって欲しくない」といった否定的な意見もあった。写真はすでに当初投稿されたというツイッターのアカウント上からは削除されている。

 何が問題なのか。

 スマホや小型のデジタルカメラが普及し、両陛下や皇太子ご夫妻ら皇族方が出かける先々で、居合わせた一般の人々がレンズを向ける光景は珍しくない。報道陣のカメラ位置は事前に定められているため、時に一般の人のほうが近い距離で撮影することもある。

 今回の旅行先まで足を運び両陛下を撮影した埼玉県皆野町の民宿旅館「竜谷閣(りゅうがいかく)」のおかみ、内田良江さん(66)は「手を伸ばして携帯電話のカメラを向けたり、気軽にネットに投稿したりするのは失礼です」。内田さんは、いわゆる「皇室のおっかけ」で、あまりにも至近距離でカメラを向けるのは控え、撮影した写真は「大切に額に入れて飾っている」という。「皇室の方々はタレントではない。目の前でシャッターを切ったり、ネットに投稿したりするのは『ばらまき』のようで抵抗がある」

 年2回、両陛下が主催し東京・赤坂御苑で開かれる「園遊会」では、両陛下と皇族方が招待者の間を歩き、近くで言葉を交わすが、宮内庁は招待者に両陛下や皇族方の撮影は遠慮するよう求めている。

 識者はどう見るか。

 皇室に詳しい所功・京都産業大名誉教授(日本法制史)は「ツイッターにアップしたことは少々オーバーランだったかな」と話す。

 所さん自身、喫茶店にいるところを撮られた写真がいつのまにかツイッターに無断でアップされて驚いた経験があるという。「両陛下に限らず、他人の写真を本人の了解なしにネットで公開するのは非常識で、違和感を持つ人がいるかもしれない」

 小田部雄次・静岡福祉大教授(日本近現代史)は今回のツイッター投稿について「デジタル文化に親しんだ若者ならではの行動。一律に規制すると若い世代の皇室への親愛の気持ちに水を差すことにもなりかねず、難しい」と話す。

 賛否が分かれたことについては「象徴天皇制に対する国民感情が多様化していることの表れ」と見る。

 昭和時代は戦後になってもかつて大元帥だった天皇に威厳と権威を感じていた国民が多く、一方で現在の天皇陛下に対しては親愛の感情を持つ人が増えていると小田部さんは分析。「象徴として皇室の尊厳と親愛をどう両立していくかが今後の課題で、同様の問題はこれからも起こりうるだろう」(中田絢子)